にいがた朝ごはん

おおぶりな食材もれっきとした郷土料理の証し 魚沼の冬漬けといえば「きっこうし漬け」

新鮮な驚きを朝ごはんから

見た目もびっくり魚沼の田舎料理

味はもちろんのこと、見た目からも普段いただいている料理とは異なる趣を醸す郷土料理。旅に出掛けたならば、そのような味わいに一つでも多く出逢いたいもの。一本ぜんまいの煮しめに車麩煮等、その味にはなにかしら覚えがあっても、もてなされる際の姿にビックリするのが魚沼朝ごはんの一品です。「『なんでこのゼンマイはこんなに長いの?』『こんな大きな麩があるんですか?』なんて、まず驚かれますね。その都度料理について歴史的、立地的背景からご説明申し上げるのですが、最後には『なるほど』と、おいしく召し上がっていただいています」。お客様の反応に顔もほころぶ桜井さん。さて、冬のおかずにはどんな驚きを提供してくれるのでしょう。

冬漬けなら・・・と地元の人が思い浮かべる旨さ

ナタで『きっこす』からきっこうし漬け

雪深い魚沼の地で代々伝わり、冬のおかずとして地元の人には欠かせない漬け物だという『きっこうし漬け』が、今回の驚きのもと。「簡単に言えば鰊に大根、人参等を麹に漬け込んだ、冬場に動物性タンパク質と食物繊維を摂取するための保存食ですが、特徴的なのは各食材の大きさです。その昔、大根をナタで『きっこす(乱切りにする)』ことからこのような大きさになり、その食材を漬け込むので『きっこうし(きっこし)漬け』になったと言われています(※諸説あります)。さすがに現在では家庭にナタもなく、第一作りにくいし食べにくいということで少しは小さくなっては来ていますが、それでも他の地域のこのような漬け物からすると、一回り以上は大きくありませんか?」。促されるように見直してみると、確かに食材の一つ一つが大きく、主張しています。それゆえ、用いる食材の素のおいしさが必要で、仕込み時間もそこそこかかるそうですが、長く厳しい冬場にじっくりと馴染ませて食す漬け物として、この地に根付いたのは想像にかたくありませんでした。

思い立ったが吉日、『きっこうし漬け』に挑戦

足りないのは代々伝わる歴史だけ?

この地域に根差したお漬け物、今ではご当地のおもてなしとして、行政から一般の方までレシピを紹介するほど注目されています。行く前に作るか、行ったあとに作るかは皆さんにお任せして、この場をお借りして代表的なレシピをご紹介しましょう。まず食材の準備として、大根を乱切りし、塩をまぶして一日ほど漬けます。鰊も(雰囲気に合わせて)少し大きめに切り、酢や酒等と一緒に一晩漬けておきます。人参も大根や鰊に合わせて適当なサイズにきざんでおきましょう。さて本番。このきっこうし漬けの肝ともいえる『ねせ糀』(ご家庭ではご飯と糀を2 対1、お湯1 カップを炊飯ジャーで2 時間程保温、撹拌することで出来ますが、魚沼地方ではスーパーでも販売されているそうです)に食材を漬け込み、2~3 日程で完成です。あくまでも代表的なレシピですので、食材の大きさや鰊の仕込み方、寝かす時間は宿や家庭のノウハウです。「食材を大きく切ってある分、その食感も楽しんでいただきたいですね」。

雪深い土地柄が素朴な姿を残した

おおぶりな食材もれっきとした郷土料理の証し 魚沼の冬漬けといえば「きっこうし漬け」

地域の歴史と風土が垣間みれる一品をこれからも

美味しいきっこうし漬けをいただきながら、一つ疑問が湧いてきます。
なぜナタで(乱暴に?)大根を『きっこして(切って)』いたのか。しかし、桜井さんと地元魚沼の冬場の厳しさ等を聞くにつれ、ちょっと氷解してきました。あくまでも推測ですが、厨房での仕事が大変厳しい季節。納屋に置いてある大根は水分を多く含み冷たいため、普通の包丁では歯が立たない。おまけに時間がかかればかかる程、手の冷えも半端じゃなかったでしょう。そこで使われたのが農作業用のナタ。仕込みの時間を省くとともに、よそ行き料理でもなかったため、ザックリとした切り方となったのではないでしょうか。また、和包丁と比較して切った断面がザラザラなので、糀が食材に染み込みやすいから・・・ということも考えられます。ついつい謎解きっぽくなってしまいましたが、その存在を一つ一つ検証して思いを馳せると、朝ごはんの時間も更に充実したものになるかもしれません。「これからも歴史に育まれた魚沼独特の郷土料理をみなさんにもてなして喜んでいただこうと思います」。桜井さんの想いはいずれ、大きな驚きとなって私達の目の前に現れることでしょう。楽しみです。

大湯温泉朝ごはん 対象旅館